さいたま市ランドコーディネーター協議会ブログ

2016年5月21日土曜日

注目されるCSAについて学ぶ/村瀬先生を講師にお迎えして


 2016年度 SCLA第1回目の勉強会:
「都市におけるCSAの役割と方向性」
~さいたま市の農業者と住民の関係構築による地域活性化~
514日(土)は総会に続いて15時半から勉強会(セミナー)を開催。新潟薬科大学 応用生命科学部生命産業創造学科 准教授の村瀬博昭先生に、CSAについてのレクチャーをいただきました。
CSAとは?
CSACommunity Supported Agriculture)は、アメリカで1986年に始まった取組で、農業者と地域住民などが、交流を図りながらリスクも共有し、一緒に農場経営を行い、地域の活力を向上させようというものです。具体的な仕組みは、地域の住民が会員となって、生産者に商品代金を前払いし、収穫時に定期的に農作物を受け取るというもの。農家は資金繰りの解消や収入の安定化が図れるほか、収穫が不安定になりやすい有機農業等の業務に専念できるというメリットがあります。会員は、豊作であれば多くの農作物を得られますが、天候異常や災害などで不作になった場合には、農作物が受け取れないというリスクを共有することになります。CSAは、多くが有機農業で多品種少量生産、会費は数千円から一万円程度、農作物の配布方法はピックアップポイントと呼ばれる共同集配所で引き取り、営農者はニュースレターやレシピを発行するなど農作業以外の活動に力を入れる、といった点が主な特徴だそうです。
レクチャーでは、CSAの説明とあわせて、日本でもCSAが注目され徐々に広がり始めている背景について村瀬先生の解説、また、実際のCSAの事例として、北海道弓張郡の「メノビレッジ長沼」、神奈川県大和市の「なないろ畑」、東京都世田谷区の住宅街にある「大平農場」などのご紹介がありました。

日本でも注目され始めたCSA
村瀬先生は、日本の農業の問題点として、「高齢化」や「低収入」が挙げられるが、これは結果で、実際の問題は「狭い農地」や「マーケティング不足」、あるいは「農協への依存過多」、そして「消費者の認識不足」等にあるのではないかと考察されています。そして、農業者と消費者をつなぐ活動、すなわちCSAはこうした問題解決に有効だと説いています。
日本でCSAが注目され始めたのは、東日本大震災後、2013年に登場した「東北食べる通信」がきっかけではないかと思います。「東北食べる通信」は、東北の生産現場の物語と生産物を都市の消費者に届ける新しいタイプのメディアです。今回、村瀬先生からお話いただいたCSAの事例とは若干、異なる部分もありますが、生産者と消費者がコミュニティとなって第一次産業を盛り上げる、という考えは共通しています。「食べる通信」やCSAの動きについて、「すごい! 日本の食の底力」という本で初めて知って以来、大きな関心を持っていましたので、今回、村瀬先生のお話で、今、日本各地で起きている様々なCSAの事例を知って、まさに、日本の食の底力を感じることができました。
さいたま市はCSAに最適な環境 !?
村瀬先生のお話では、日本はコミュニティで支え合う時代の後、個を尊重する時代を通り、現在はコミュニティで過ごす新たな時代を迎えているそうです。この時代では、豊かさとは収入の高さではなく、人とのつながりや協力できることにあると言います。
さらに、先生は、さいたま市はCSAに最適な環境だともお話されていました。人口が多い上に農業ができる場所が多く、1h未満という小規模農家が多いこと、農家の後継者不足は進んでいるが若者が住みやすい立地であることなど、農業者がCSAを始める条件が揃っているのだそうです。農家へのアンケートでは、CSAはまだ知らない方が多く、会員集めや営農以外の作業に手をかけることが大変、といった声が多いようです。さいたまに限らず、農業者と地域の消費者をつなぐ活動がカギになるであろうなか、SLCAでも一助になることができたらと思います。

串八丁@大宮で
勉強会終了後、村瀬先生は懇親会にも参加くださいました。システム・デザインマネジメントの博士として外資系コンサルティング会社などを経て、新潟薬科大学唯一の文系学科で食や農業を通じた地域活性化の研究や活動支援に携わる村瀬先生。出身は北海道で、子供の頃、ご家族と一緒に青函連絡船で旅をし、本州で初めて降りた駅が大宮だったそうで、さいたまにはとても親近感を持ってくださっているとのこと。優秀なご経歴を持ちながら謙虚で誠実なお人柄に、皆、ファンになりました。ありがとうございました! (穂)
長居をした「串八丁」での締めは、
浪江農園のお米を使ったおにぎりでした